2012年10月08日
覚醒 - 第八章

覚醒 - 第八章(The Awakening Act VIII)とは、2012年9月19日に公開された物語。日本地域では9月7日から9日にかけて実施された覚醒 - 第七章ライブイベントにおけるロード・ブラックソンの描写から始まり、全面戦争の瀬戸際に立つブリタニアの街々に対する懸念とデュプレとの対話が綴られている。

ポーンを動かす者とは、2012年9月20日から同月23日にかけて開催されたライブイベント。なお、Yamato ではこのイベントを第12回銀蛇自警団活動指令として実施され、ウェブサイト上に掲載された導入物語も他の破片世界と異なりサー・ファントムへ宛てた依頼文となっていた。

大和シャード/9月20日(木)22時〜
無限シャード/9月21日(金)22時〜
桜シャード/9月22日(土)20時〜
出雲シャード/9月22日(土)21時〜
北斗シャード/9月22日(土)22時〜
瑞穂シャード/9月23日(日)20時〜
倭国シャード/9月23日(日)21時〜
飛鳥シャード/9月23日(日)22時〜

覚醒 - 第八章第二節とは、2012年9月29日に公開され、ブラックソンとデュプレ双方のロード・ブリティッシュへの想いと未来への決意が綴られた物語。その後、米国9月29日に開催された15周年記念パーティーを経て、日本地域では10月7日から8日にかけてライブイベントとしてブラックソンの戴冠式が執り行われた。

飛鳥シャード/10月7日(日)21時〜
桜シャード/10月7日(日)21時〜
北斗シャード/10月7日(日)22時〜
大和シャード/10月7日(日)22時〜
倭国シャード/10月8日(月)21時〜
出雲シャード/10月8日(月)21時〜
瑞穂シャード/10月8日(月)22時〜
無限シャード/10月8日(月)22時〜



2012年09月19日
覚醒 - 第八章
2012年09月18日
ポーンを動かす者の開催について
2012年09月21日
ポーンを動かす者
2012年09月29日
覚醒 - 第八章第二節
2012年10月05日
覚醒 - 第八章第二節ライブイベントの開催について
2012年10月07日-08日
覚醒 - 第八章第二節ライブイベント

2012年10月8日 覚醒 - 第八章第二節ライブイベント

その日、私は自宅で改めて自らの衣装を確認すると、ため息をついてブリテインへと向かった。タウンクライヤーがブラックソン城へ市民を招待すると告知していたが、同時に正装で来ることも呼びかけていたからだ。残念ながら、私は十年来着続けたこの服以外に、正装というものが想像できなかった。果たして、正装とはなんなのだろうか。

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トランメル世界ブリテインの北端の位置は変わらずに再建築されたブラックソン城へ足を運ぶと、開始時刻の30分も前だというのに既に市民の姿があった。謁見の間には初代国王ロード・ブリティッシュのものより大きな王座が用意されており、見知った顔ぶれも王座の東西に整列していく。普段通りの衣装で参列している者もいれば、日頃は着慣れぬドレスで身を飾っている者もいた。私は普段通りの小汚い服装で訪れたことを恥じ、有志が謁見の間で配布していたもののひとつ、カオスシールドを手にとった。かつてのオーダーカオス戦争におけるカオス主義の象徴であり、いまでもロード・ブラックソンの象徴となっている紋章が描かれた盾だ。

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謁見の間に見知らぬ顔も増え大いに盛り上がるなか、謁見の間の南北に長く敷かれた赤絨毯の南端にひとりの騎士が立った。先日の国民会議ではブラックソンを強力に後押しした人物、名誉の騎士にしてトゥルー・ブリタニアンの司令官を務めるデュプレであった。

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デュプレはゆっくりと赤絨毯を歩み進むと半ばで振り返り、参列した人々を見回す。今宵は市民に正装を促すほどであるから、式典さらに言えばロード・ブラックソンの戴冠式であるに違いないと気づいてはいたが、現れた人物がデュプレひとりであったことに私は違和感を覚えていた。先日の会議で重要な役回りを見せたシェリーやジョフリーの姿も見えなかったし、現政権の重鎮ら評議会メンバーの姿もなかった。むろん、他世界の支配者層が来賓として招待されている様子もなかったのだ。

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それでもデュプレは参集した市民を前に語り始めた。

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"ブリタニアの市民諸君!偉大なる祖国はかつて紛争に明け暮れる日々を過ごした。私がフェルッカの地で魔女ミナックスおよび彼女の軍隊と熾烈な戦いを繰り広げる間、私はブリタニアが自ら分裂する様を目の当たりにした。この地に王冠を戴く者が無き間、ブリタニアの街は引き裂かれ、貴族は農民を無視した。この混乱を逆手に取った卑劣なエクソダスは、欲望のおもむくままにイルシェナーの地を引き裂き、バラバラにした。"

更にデュプレはエクソダスを悪魔と評してその討伐後にテルマーで起きた老廃病の蔓延にも触れた。"悪魔を倒さんがため、多くの者が私と共に勇敢に戦ってくれた。しかし悪魔の死によって、より暗く、より不吉な“悪”が名誉のムーンゲートに放たれた。事態はそれだけでは終わらなかったのだ。ヴァーローレグのガーゴイルが故郷を追われたことでテルマーに“疫病”が持ちこまれすべてのガーゴイルの民は治るあてのないまま苦しまねばならなかった。"

そしてデュプレはブラックソンの功績を語る。"そして私はテルマーの小さな漁村についての噂を聞いた。しかし私は自分の耳を疑わずにいられなかった。私が知るかっての機械仕掛けの歪んだ怪物としてではなく、私の目の前に立ったロード・ブラックソーンは、ただひたすらに苦しんでいるガーゴイルを助けようとしていたのだ。彼の復活を告げる噂はたちまちこの地を駆け巡り、そして彼がその業によって再び我々の福音となるまでそう時間はかからなかった。目を見張らんばかりの神秘の光をあたりに撒き散らしながら、名誉のムーンゲートを損壊させた邪悪なものは一掃され、ムーンゲートは再びまばゆいばかりの青色を取り戻したのだ。二度あることは三度あるものだ。今回も決して例外ではないだろう。彼の高潔な人格だけが、砕け散ったブリタニアの街を再びひとつにし、困難に陥った民衆を救済することができる……。"

デュプレの演説にその名が出たことを機に、赤絨毯の南端にもうひとりの人物が姿を現した。黒いフードを深く被るその人物こそ、ロード・ブラックソンであった。

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ブラックソンは赤絨毯の半ばに立つデュプレの脇をゆっくりと抜けると、王座へ腰掛けた。それはブラックソンその人と知らなければ目の前を亡霊が通り過ぎたかのようでもあった。

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ブラックソンを背に、デュプレはなおも市民へ語り続ける。"親愛なる国民たちよ、ブリタニアは長きにわたり正統な支配を持たなかった。あまりにも長い間、トランメルはその指針となるものを持たなかった。この男が悪魔の化身でないことは、その行動から明らかにされたばかりでなく、我々の未来への希望足りうることは今や誰もが知るところとなった。"

そしてデュプレは"ザー女王とテルマーの民、そして新たに台頭した貴族階級を含むすべてのブリタニアの民の代表者として、ここに私がそなたを戴冠する任を得たことは名誉なことである。"としめて、ブラックソンの座る王座へと向き直った。

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デュプレはゆっくりと王座へ歩み出ると、ブラックソンと向き合い、こう言った。"ロード・ブラックソーン! そなたをブリタニアの王として迎えよう!"その言葉を聞き入れるかのように、ブラックソンはフードをあげる。それは戴冠の瞬間であった。

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戴冠しロードからキングへ至ったブラックソンは、王座から立ち上がるとゆっくりと歩み出て赤絨毯を踏んだ。デュプレは脇へ退き、新王の言葉を待つ。

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キング・ブラックソンは左右にゆっくりと身体を向け、市民と顔を合わせると厳かに宣った。"私はすべての市民を保護するという大いなる名誉と誓約を、謙虚さを持って受け入れよう!"

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国王ばんざい、ブラックソン万歳と市民が喝采をあげるなか、キング・ブラックソンは赤絨毯を去っていく。デュプレもこれに付き従い、赤絨毯を二人は南へと歩いて行った。

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二人が赤絨毯から下りると、キング・ブラックソンは謁見の間にムーンゲートを創出させ、去っていった。ムーンゲートを潜るとそこはイルシェナー世界。

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狭い谷間には、ただ黒い像とムーンゲートのみが存在していた。

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恐る恐る像に触れると、奇妙なことに一枚の証書を手に入れることができた。それは先ほど謁見の間で見かけた王座のレプリカだった。

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私は自宅へと戻り、手に入れた証書を広げてみた。東向きと南向きとを選択できるその王座は随分と大きなもので、馴れるにはかなりの時間を要するように思えたのだった。

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2012年10月5日 覚醒 - 第八章第二節ライブイベントの開催について

ライブイベント “The Awakening(覚醒)第八章 第二節”

ブリタニアに新たなる歴史が刻まれようとしている。市民諸君にはぜひその目で見届けてもらうべく、ここに謹んでご案内申し上げる。

〜 Lord Dupre



開始予定日時
飛鳥シャード/10月7日(日)21時〜
桜シャード/10月7日(日)21時〜

北斗シャード/10月7日(日)22時〜
大和シャード/10月7日(日)22時〜

倭国シャード/10月8日(月)21時〜
出雲シャード/10月8日(月)21時〜

瑞穂シャード/10月8日(月)22時〜
無限シャード/10月8日(月)22時〜

集合場所
トランメルのブラックソーン城、謁見の間
(六分儀座標:18o 33′N, 15o 11′E)

2012年9月29日 覚醒 - 第八章第二節

覚醒 - 第八章 第二節
投稿日:2012年9月29日
自分の城のバルコニーで水面を見渡しながら、ロード・ブラックソン(Lord Blackthorn)は両手の指を顔の前で合わせた。前回この水面を目にし、ゆるやかな流れを楽しみ、味わってから久しい。ヘクルス(Heckles)は、城の修繕について実にいい仕事をし、あえて言うなら“ブラックソン流”の内装も施されていた。左手をみて、常に携行していた旅行向けチェスセットに目をやり、これからのより単純な日々について再び考え始めた……。だが、考えはじめると、ちょっとした苦笑いのようなものが浮かんでしまった。もちろん、振り返ってみた時には単純な日々なのだが……、その時その時では、複雑で困難な日々だったからだ。

立ち上がり、彼は城の中のまだ見ていない場所、多くの部屋を散策しはじめた。ここには何人か街の人々を雇わなければならないのは明らかだな、と考えて一人でクスクス笑い、ヘクルスが城向けの資金を使い込んでいないことを願った。再びブリテインの街で暮らすことは心地よいものだった……。最終的に物事がいい方向に向かっているように思えることも、さらによりよい気持ちにさせてくれた。名誉のムーンゲートは修復され、暴徒はほぼ沈静化し、貴族たちは満足し、そしてエクソダスは(Exodus)は倒れた……。このように物事は好転しているにもかかわらず、ロード・ブラックソンは、ある人物に再び会いたいという叶いそうにない願いを常に抱いていた。

彼は城をあとにし、通りを歩いた。多くの人々が彼に気づき、あいさつした。妹が病から救われたという旅のガーゴイルにも出会い、長々と礼を述べられ、すっかり足止めされてしまった。様々なお礼の品を受け取らずになんとかやり過ごし、ようやく門にたどりついたのだが、話に聞いていたとおり、門には例の暴徒の件から鍵がかけられていた。冷たい鉄を握りしめ、間を通して旧友の城内の荒れた庭と草木を見つめた。一瞬、再び彼に会うことはできるのだろうか、という考えが頭をよぎった……。すると、幽閉中に街を再び目にできるだろうかと自問自答した時に浮かんだのと同じ考えが胸の内に湧いた。少なくともあの時の考えは現実のものとなっている。

振り返り、彼は自分の城へと向かいながら、自らの想いをまとめ決意した。たとえ、この世界で友と再会し、かつてのような議論を交わす機会が訪れなくとも、この地は帰還するにふさわしいものであると思え、帰還した際にはこの国が誇れるものであるように努めようと。機械体である偽者によって着せられたブラックソンの汚名をすすぐには長い時間を要したし、全てを清算するまでの道のりはまだ長いだろう……。だが、彼は力尽きるまでその道を歩もうと心に決めていた。



デュプレ(Dupre)は、式典に臨むために鎧を最後に磨いたのはいつだったか覚えていなかった。それだけ長い時間が経っていたのだ。それでもまだ、これが正しい道であり、ブリタニアが前に進める唯一の方法だと信じていた。深く腰掛け、松明の明かりで微かに光る鎧を見た。それは、今までにないほど見事に磨きあげられていた……。そして、その部屋の中にあるもう一つの完璧なまでに磨き抜かれ輝く物体を見たデュプレの顔に、笑みが浮かんだ。彼は鎧を置いて、それに近づいて手に取った。金属製の見事な品で……、優美で繊細だった。それでいて、ずっしりとした王冠の重さを手に感じ取れた。これをブラックソンが戴くことに、妬みを感じることもなかった。ケンタブリジアン(Cantabrigian)がいたら、この予想外の展開についてなんと言うだろうな。そう考えたら思わず笑いがこみ上げてきた。そして、身の回りの品をまとめ、旅支度を始めた。ブリテインへ向かうのだ。

The Awakening Act VIII - Part 2

Kai Schober
28 Sep 2012 17:43:08 EST

Written by the EM Team

Looking out over the water from his balcony, Lord Blackthorn steepled his fingers in front of his face. It had been a long time since he’d seen these waters and had the chance to enjoy the gentle movements caused by the current, and he savored it. Heckles had certainly done a good job of having the place repaired, and even had it furnished the way that he himself likely would have. Looking to the left, he glanced at the travel chess set he’d carried with him all this time, and once again his thoughts started to drift back towards simpler days…though this thought brought a bit of a wry grin to his face. They only seemed like simpler days in retrospect, of course…at the time they were every bit as complex and difficult as these days were.

Rising, he began to stroll through the castle, taking stock of the place and its vast array of rooms. There was no doubt that he’d need to hire on some of the townspeople to staff the place; he chuckled to himself and hoped that Heckles hadn’t completely emptied his treasury for the castle. It felt good to once again be in the city of Britain…and it felt even better that finally, things seemed to be on the road to redemption. The Honor moongate had been fixed, the rioters almost all quelled, the nobles sated, and Exodus routed…despite the progress though, there had always been one person that Lord Blackthorn had hoped against hope he’d have had a chance to see again.

Leaving behind his castle, he walked through the streets, many recognizing and greeting him, and being stopped by a traveling gargoyle who insisted on thanking him many times for healing his sister who had come down with the plague. Once he’d managed to slip away without taking any sort of gift, he finally came to the gates, locked still after the riots he’d been told about. His hand clasped around the cold metal and he peered through the gates towards his old friends castle, staring at the untended garden and foliage. He wondered for a moment if he’d ever see him again…but then he’d had the same thoughts during his imprisonment of ever seeing the city, and that had come true.

Turning, he headed on his way back to his own castle, and coalesced his thoughts into a purpose. Whether or not he would ever see his friend in these lands again and get a chance to match wits against him once more, he would make sure that it was a land worth returning to, and one which he could come back and be proud of. It had been too long in this land since the name of Blackthorn was associated away from the dark and terrible legacy that his mechanical surrogate had left, and it would be a long road to the final redemption…but he intended to walk it for as long as he could.



It had been longer than Dupre could remember since he needed to polish his armor for ceremonial reasons. Still, he believed that this was the right course, and the only way for Britannia to advance. He sat back to look at the armor, gleaming in the glow of the torchlight. It was as good as it would ever get…and a smile came to his face as he looked over to the other perfectly polished and shining object in the room. He set the armor down and approached it, lifting it up and holding it in one hand. It was made of fine metal, and almost…delicate. Still, Dupre could feel the weight of the crown in his hand, and he didn’t envy Blackthorn to wear it. He wondered what Cantabrigian would have to say about this turn of events, and chuckled softly to himself, gathering up his things and preparing for the trek to Britain.

2012年9月21日 ポーンを動かす者

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私はブリタニア城の奥まった場所に位置する会議室の扉を開いた。席に着くべき施政者らの姿はなく、ひとり椅子に腰をおろして待つことにした。今宵は王室評議会代表のサー・アークースとロイヤルガード隊長のサー・ジョフリーの召集により国民会議がこの部屋で行われるというからだ。城内では謁見の間に次ぐ規模だが、この部屋に収まる程度の人々をもって国民の総意を示すには至るまいと思われた。

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木製のテーブル上には、西側に二席と東側に一席の前に予約席を示す本が置かれていた。今宵の列席者には、席を確保すべき人物が三名いることがわかる。主催するアークースとジョフリー、そして立会いとして名の挙がっていたデュプレの三名だろう。

徐々に人々が入室してきたが、その顔ぶれは多岐にわたっていた。最も多きは城下町ブリテインの市民であったが、ジェロームやミノックなどから訪れた市民の姿も見られた。その中にジョフリーの姿もあった。

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彼は市民らに対して"やあみんな、よく集まってくれた!今日は我らがブリタニアの未来のため、非常に大切な会議になることだろう。来てくれたことに感謝する!"と挨拶すると、下手の椅子へと着席した。

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王室評議会とロイヤルガードの連名による開催と告知されていたが、主催者であるジョフリーが下手に座ることに、私は違和感を覚えた。長年に渡って前線で活躍し王なき後もロイヤルガードを率いる忠臣だが、ロイヤルガードキャプテンの職にとどまり続けていることを私はかねてより指摘してきた。たとえ戦場でしか活躍の場が与えられぬ戦士であるとしてもだ。この席次は彼の王政での立場の弱さを改めて示す結果となった。

室内が落ち着くと、二人の人物が会議場へと入ってきた。ひとりはエクソダス戦役で大功を得たデュプレ。彼は室内にジョフリーの姿をみつけると、声を張った。"ジョフリー! ジョフリーじゃないか!久しぶりだな! 元気だったかい?"。

対するジョフリーも席を立つとデュプレのもとへと駆け寄り、固く手を握り合った。"やあデュプレ!ずいぶんと活躍してるそうじゃないか。……少しやせたんじゃないのかい?"と訊ねれば、デュプレも"ははは! そんなことはないさ。ドーンが亡くなって以来だったかな?"と応じた。かつて共にロード・ブリティッシュ治世で活躍した二人の英雄は、久々の再会を喜び露わに扉前で語り合っていた。

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そしてもうひとりは優美な衣装と豊かに髭を蓄える如何にも貴族の佇まいの人物、王室評議会代表たるアークースであった。彼は二人の英雄の歓談に水を差すように軽く咳払いすると切り出した。"みんな集まったかな?"

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デュプレはようやくアークースへ振り向くと、"ああ、アークース! ちょっと待ってくれ。小さな友だちがまだなんだ。"と言った。語り合う二人の英雄のそばには、壁に小さく穿たれた穴があった。そこからちょろりと今宵四人目、と言うと適切ではないが、新たな列席者が顔を覗かせた。歴史の転機に現れ続け見守ってきたねずみ、シェリーだった。シェリーは"ごめんなさい! 皆さん!お待たせしちゃったかしら?"と訊ねた。

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デュプレとジョフリーは好意的に彼女の参加を歓迎したが、アークースは早く会議を始めたいのか、二人に着席を促がした。"サー・デュプレ。私の隣に……。サー・ジョフリーは私の前へ。"

アークースに促され、王国の未来に深く係わる人物らはようやく着席することにした。席を用意されてはいないシェリーはテーブルへ真っ先に飛び乗り、中央で会議に参加した。ジョフリーもアークースに指示されて下手の一席へと腰を下ろす。

そのやり取りだけ見ても、今宵の会議においてロイヤルガードは国民への関心を誘うためだけに名を連ねさせられたのだと窺い知ることができようし、シェリーに至っては歓迎されもしなかった。

国民会議はアークースの議事進行によって幕開けした。"椅子の数に限りがある上に申し訳ないが、声が届かない場所があるので、市民の皆さまはなるべく部屋の北西側にお集まりくださいますよう。そして議論には積極的にご参加くださいますように。"

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改めてアークースより紹介された彼らの名は、構成員の定かでない王室評議会のアークースを除けば、ブリタニアの誰もが耳にしたことはある顔ぶれだった。"申し遅れたが、私は王室評議会のメンバーでトリンシックの貴族のアークース。そして改めてご紹介するまでもないが、サー・デュプレ、サー・ジョフリー、そして……。"

アークースが言いよどんだことから、シェリーは自らテーブルの中央で名乗りを挙げた。"シェリーよ! どうぞよろしくね!"

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"サー・デュプレは現在はトゥルー・ブリタニアン派閥のリーダーとしてフェルッカにその拠点を移しておられるが、かっては我が王室評議会のメンバーとしてもご活躍され、我が街トリンシックの市長も務めておられた。"アークースの紹介にデュプレが頷く。

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"サー・ジョフリーは言うまでもなくかの王の親衛隊長を務められた方である。それでは始める。"ジョフリーもまた紹介に頷いた。ただ、テーブル上のシェリーだけは結局紹介もされず、シェリーはその扱いに驚愕していたようだ。

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私自身も北西端の一席に収まり、この場を支配するアークースが議事をどこへと舵取りするか固唾を呑んで見守る。

"まずブリタニア各地で勃発している暴徒たちによる放火や襲撃についてだが、ロイヤルガードの収監施設はどこも手いっぱいで、もはや限界を迎えようとしている。我々は暴徒をより強硬な手段によって鎮圧すべきであろう。生まれの卑しい者にはパンを与えるだけ無駄である。"

アークースは、ブリタニアにおいて今なお続く懸案事項である暴徒問題を切り出した。世界各地でさまざまな事件が相次いだ混迷の昨今にあって、あらゆる破綻の発端となった暴徒問題だが、各地の事件が徐々に収束へと向かうなか、抜本的な解決策を見出せていない問題である。

しかし、ロイヤルガードを率い暴徒鎮圧の責を帯びるジョフリーは、アークースの考えに懐疑的な態度を示した。"……失礼だが、アークース殿。彼らは元々は飢えて他の街から流れ込んで来たれっきとしたブリタニア市民だ。もちろん、だからといって放火や襲撃が正当化されるわけではないし、街を守るために手段を選ばないと考えていた時期が私にもあった。しかし本当にそうだろうか?"

アークースはその反論を一蹴し、"他に何があると言うのかね?街の平和を乱す不届き者にはしかるべき制裁を加えるのが当然であろう。"と言った。

それでもジョフリーは引き下がらず、"もちろん私とて最初は彼らに怒り心頭であったことは否定すまい。しかし何が彼らをあそこまで駆り立てるのであろうか?ブリテインの街とブラックソーン城が武装した暴徒らによって占拠された際には、ヴァーローレグ産と見られる爆薬の樽が街の主要部に置かれるなど、ただ飢えに苦しむ人々の所作にしては手が込み過ぎてはいないだろうか?私には何者かが人々を扇動しているように見える。"と、黒幕の存在を示唆してみせる。

"なかなか面白いご意見だが、だとしたら一体何がそうさせたと?イルシェナーのあのエクソダスとかいう化け物の所為だとでも言うおつもりか。"アークースは実在もわからぬ黒幕のために国政が滞ることを懸念しているようだった。

このやり取りは、私に遥か昔の惨事、フォロワーズ・オブ・アーマゲドン事件を思い起こさせた。あの事件のさなかには、そのような破滅主義者が実在するかは謎とされていたし、実在の有無について王国を二分する議論が交わされていた。

黒幕の有無という答えを出し得ぬ議論が始まることを止めるように、デュプレは更なる懸案を挙げた。"アークース。それがエクソダスの仕業かどうかはわからないが、さらに憂うべきは混乱に乗じて私腹を肥やす者がいることだ。所領を主張し、不当に租税を課す者、盗品を売買する者、帳簿をごまかす者……。"

アークースもこの意見には首肯を示した。"その通り。あまつさえ王室評議会の真似事をして爵位の売買をする輩まで出て来る始末。我が王室評議会の威信にかけて、責任の所在を明らかにせねばならない。"

アークースの強弁に、あわててデュプレも抑えるよう促がした。"まあ待て。君の言い分はもっともだが、日々の暮らしに窮していたのは何も平民だけではない。貴族とてこの時世に糊口をしのぐため、爵位を手放したとて何の不思議があろう。"

私もアークースの強い想いは弾圧へ発展しかねぬと危惧した。シェリーもなんとか穏便に落ち着けようと話題を振る。"ねえ! 今ふと思ったんだけど爵位を買うほどの人たちってきっとお金持ちよね?その人たちに助けてはもらえないのかしら?貴族はその身分だけじゃなくて、ずっと体面を保って行かなくちゃならないわけだから、貴族でいるってきっとねずみが思うよりもずっと大変なことだと思うの!"

シェリーの意図を察したのか、デュプレも相槌を打ってみせた。"君の意見に賛成だよ、シェリー。それに、爵位を購入した人々は皆その街への並々ならぬ愛着があってのこと。どうしてその街を選んだのか、その街を救うために何が必要か、皆さんの率直なご意見を伺ってみようじゃないか。"

これにはアークースも反論することはない。列席者たちは自らに縁ある街について、いかに素晴らしいかを語っていった。

口火を切ったのはジョフリーだった。"例えば戦士の街である我がジェロームが誇るのは、何と言ってもあの巨大なピットであろう。見習いの戦士はもちろん、ベテランの戦士も時にピットで汗を流す。戦士たちの高い要求に応えるために、ジェロームの鍛冶屋は皆腕利きなのだよ。" その意見にデュプレが頷き、"確かにジェローム産の武器防具は優れているね。だがしかし汎用性があるとは言い難い。ただ頑丈なだけではなく、魔法使いにも好まれる防具を生産するなどの柔軟性があれば、ジェロームの産業はブリタニアでより広く認知されるだろうと思う。"と評してみせると、ジョフリーは"魔法使いの街と言うとムーングロウかね?"と聞き返して肩をすくめてみせ、"我がジェロームは荒くれ者の街の印象が強いかもしれないが、図書館や劇場もある文化的な面もあるのだよ。"と付け加えた。

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次にデュプレがトリンシックを語った。"我が街トリンシックは防壁と堀に囲まれた堅牢な城塞都市だ。街にはパラディン・ギルドが存在し、日々若き騎士たちがその技巧だけではなく、高潔な精神を掲げ、名誉の徳を探求しているのだよ。" ジョフリーも忌憚なく応じ、"それはおおいにけっこうだが、実戦に勝るものはないよ。食うか食われるかの戦場でそう毎回待ったをかけてもいられまい。"とデュプレに対して言った。

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戦士の街と騎士の街という武に秀でた街が挙げられるなか、忘れてはならぬとシェリーはブリテインを挙げた。"ブリテインだって負けてないわよ! 何と言っても首都だし一番大きい街だし!でもね、ブリテインはちゃんと緑もあって、イースト・サイド・パークみたいな素敵な公園もあるのよ!"

だが、ブリテインに対する意見がほかに挙げられる間もなくアークースは次なる意見を求めた。"皆さんご意見がおありですかな?"

帰属する街への想いを求められ、人々はぽつりぽつりと意見を発していった。ある市民は生まれ故郷だからトリンシックを宣言したと応じ、ある市民はジェロームよりミノックの方が鍛冶は腕効きなのだと応じた。私もまた、自らの帰属する街、ムーングロウを"知と教養の共有こそが理解となる。ムーングロウは研究機関ライキュームを袖に控えている"のだと評し、その素晴らしさを熱弁したものだ。

アークースも自らの街、トリンシックとその城壁を美しいと評した。オークによって燃やされた結果に過ぎないと私は思ったし、他の市民も城壁の有無にかかわらずトリンシックが魔物の侵略を許した歴史を指摘した。

さて、自らの街を称え、互いに賛同しあうだけで問題が解消するはずがない。アークースの関心をそらす意図しか感じぬこのやり取りに私が小首を傾げていたところで、アークースが再び厳格な口調で"それぞれに思いがあり、それぞれ特色があるものだな。"と語り始めた。"これらの街を統制するには強いリーダーシップが求められるのは明白。"と続ける。それは事態の収束を図らんとするうえでは、一理あるものだった。

そしてアークースは、"我が王室評議会は満場の一致を持ってサー・デュプレを次期国王に推す。"と締め括る。高らかに会議場へ響き渡るアークースの宣言、それはこの場の宣言を既成事実として早急に王位継承へ進めたいとの考えが感じられたし、そこには空位のなかで発言力を失った王室評議会の政治的思惑が透けた。

初代国王ロード・ブリティッシュの側近であり、第二代国王ドーンを市井より見出した人物であり、今なおフェルッカ世界における全権委任の司令官として活躍するデュプレは、国王に推挙されても反論しようのない英雄である。私が市民の立場でひとつ気に食わぬとすれば、斯様な英雄を利用しようとしていることだった。

ひとり、デュプレ当人は既に打診されていたらしく、アークースに苦言した。"アークース。その話は辞退させてもらうと言ったはずだ。私がいるべき場所はここではない。名誉の戦いこそ騎士の誉れであり、鎧と剣だけが全てを解決する場所こそ、私が私でいられる場所だ。"

アークースの次期国王推挙は、それ自体に強い反論のしようはなく終わろうとした。だが、アークースの続けて発した次の言葉が、列席者らの反感を買う。

"サー・デュプレ。真の王だけが求心力を失ったブリタニアを再び一つにすることができる。現在のブリタニアで国王たりうるのは、人々を率いてエクソダスを討伐したあなたを置いて他に誰がいると言うのだ。王の不在はあまつさえ自らをロード・ブラックソーンと名乗り、さも自分がガーゴイルの疫病を治し、名誉のムーンゲートを修復したかのような見えすいたパフォーマンスを行う者までのさばらせている。我が王室評議会はこの不審な男を人心を惑わす不届き者として、重要参考人として招致する予定である。トリンシックを首都に!"

シェリーは声を張り上げて訴えた。"ちょっと待って!彼はロード・ブラックソーンよ! 間違いなく。そして彼の偉業は彼が一人で成し遂げたことでもないの!皆さんのご協力があってこそできたことなの!"。アークースは一笑に伏し"シェリー。だとしたらどうだと言うのかね。君はあの明らかに異常な半機械人間の亡霊が墓から蘇って来たとでも言うのかね?"と応じ、意見を押さえ込もうとする。私は、アークースの論にも筋が通っていると感じていたし、かといって私自身が実際に言葉を交わし経験したブラックソンの途方もない話も偽りなきもののように思えていた。

王室評議会が、真否明らかとなっていない人物に国の未来を託そうとしないことは当然のように思える。そして、建国の忠臣たるブラックソンの名は、ブリタニア史上最悪の反逆者とも呼ばれようと色褪せぬがゆえに、デュプレ擁立後の政権に対する反旗の象徴となりかねぬ存在だ。王国安定を目指す王室評議会としては、反逆の根を事前に断つためにも強硬な排除論を示したものと考えられる。

強まる反論にアークースが窮し始めたころ、国王へ推挙されたデュプレ自身もブラックソン排斥に異を唱えた。"アークース。私は彼のことを完全に信用したわけではないが、彼が誰であれ、彼が人々のためにしたことに目を向けるべきだ。ガーゴイルの疫病を治療する薬を開発し、人々への呼びかけを行ったのも彼だ。名誉のムーンゲートを修復するにあたっても、一体我々に何の打つ手があったというのだ。手立てを持ってウィスプから必要な呪文を手に入れられたのも、彼の判断があってこそだ。"

アークースは諌めるが如く応じた。"サー・デュプレ。あなたは簡単に人を信用しすぎる。いずれ彼は民衆扇動罪のかどで訴えられることになるだろう。彼が自分の功績を誇示するためにガーゴイルの間で疫病を流行らせ、自らの手で名誉のムーンゲートを損壊させたのではないとどうして言いきれよう?"

それでもデュプレが"私はそうは思わん。"と退けると、流石のアークースも自らが擁立するデュプレの反論には虚をつかれたらしく、慌てて席を立つとデュプレの耳元に顔を寄せて小声で諌めた。"サー・デュプレ……!お控えください! 何を言いだすのです……!"

会議場の雰囲気は、デュプレ擁立が宣言されたときとはうってかわり、アークースへの、ひいては王室評議会への不信へと発展しようとしていた。

ジョフリーも続けて訴える。"ロード・アークース。お気持ちはお察しするが、今は誰かを裁くことよりも、いかにしてブリタニアに平安をもたらすかを考えるべきだ。私はロイヤル・ガードとして自らの力の限界を知った。人々を導くのは力ではない。徳、そしてやはり類まれな資質を持った指導者が必要だ。一人の王、真の王のもとに我々はひとつになるべきだ。"

シェリーもまた続ける。"ねえ! みんな信じられないかも知れないけど聞いて!彼のチェス・ボードを見た?かの王の刻印が刻まれているのよ?!なぜ彼がそれを持っていたのかしら?彼はかの王の親友だった……! 間違いないわ。彼こそはロード・ブラックソーン!"

列席者から次々と訴えかけられるブラックソン擁護の声に、アークースは彼らの真意を悟り、驚愕した。"ばかな……!かってブリタニアをその独善的な思想によって混乱に陥れたあの男を、あなた方はかつぎ上げようと言うのか?"

ジョフリーはもはや隠し立ての必要なしと見たか、アークースへではなく集まった市民に向けてその是非を問うた。"もちろん彼自身が何を望んでいるのかはもとより、人々の意見も聞かなくてはならない。皆さんのご意見を拝聴しようではないか。皆、どう思うか!"

唐突に議論から蚊帳の外へと追いやられたアークースが呻く。"まさか、あの怪しい男を本気で担ぎあげようなどと考えてはいまい?どうなのかね?"

もはや王室評議会の劣勢は明白だった。私も沈みかけた船に乗るつもりはなく、"思想の違いはあれど、彼の行いは民意に訴えかけるものだろうな。そもそも民意を反映できぬ今の王室評議会こそ改革すべし!"と切り捨てた。

"ぐぬぬ、なにをばかな……。"と呻き続けることしかできぬアークースがいた。

なかには間接民主主義を唱える抜本的な改革志向の意見も見られたが、市民の多くは共和制の建て直しを求めていった。それはすなわち、現在の王室評議会を排斥することに他ならない。自らの進退へ議論が及んだことで窮するアークースだったが、譲れるはずもなく"ぐぬぬ……。我が王室評議会は、あの男の監視を続行する!もう良い!いずれ真実は法廷で明らかになる。"と言い捨てた。

"アークース、その必要はないよ。彼のことは彼自身から直接聞こうじゃないか。" そうデュプレが口にすると、示し合わせていたかのように会議場の扉が開け放たれ、その向こうにひとりの男が立っていた。黒いローブをまとっただけの簡素な衣装の男は、促がされて室内へと歩み入った。私の視界に、絶句するアークースの姿が写る。対してジョフリーやシェリーが動揺の素振りを見せることはなく、アークース以外の列席者の間でお膳立てされたものだと気づいた。会議場に現れた男とは、今まさに糾弾されていたロード・ブラックソン本人だった。

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"お待たせしてしまってすまなかった。どうぞ、議論を続けてくれ。"

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デュプレはブラックソンの列席を歓迎して言った。"急に呼び出してしまってすまなかったね。まあ掛けてくれ。"

アークースそばの市民が席を譲ると、ブラックソンはゆっくりとその椅子に腰掛けた。そして、デュプレは市民らを見渡すと、"君に関しては私よりもむしろ皆さんが聞きたいこともあろう。答えられる範囲で答えてくれ。何かあるかな?"と求めた。アークースだけは"こんな不届き者を呼んで何をしようというのだ……。"と呟き困惑していた。

私は席から横目にブラックソンを見つつ訊ねた。"民意があなたを王へと望めばなるのか"と。アークースはなおもブラックソンは"民を欺いている"のだと主張を繰り返すが、ジョフリーに諌められてしぶしぶ押し黙るしかなく、ブラックソンを席の後ろから睨みつけた。

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ブラックソンはしばらくしたのち、語り始めた。"王位か……。そんなものは重要ではない。今はブリタニアの街同士が反目しあっている状況を収める事が先決だ。私はそのためにどんなことでもやるつもりだ。"

ジョフリーが"為すべきことがあるというのですな?"と問いかけると、ブラックソンは"アナーキズムへの思慮深き呼びかけの中でも述べたとおりいかなる者にも自由があり、それを行使すべきだというのが私の考えだ。だが…。"とかつて彼自身が示した混沌の思想を改めて口にした。そのときのことだった。

またしても会議場の扉が開け放たれた。眩い装飾に彩られた衣装をまとい、つかつかと会議場内へ入ってきた者、それはテルマーを統べるガーゴイル族の女王、ザーだった。ザーは会議場内を見渡し、ブラックソンの名を挙げてその姿を探した。"ロード・ブラックソーン!ロード・ブラックソーンはいらっしゃいませんか……!"

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会議場にどよめきが広がる。先ほどから諌める側であったジョフリーまでもが女王の来訪に驚きの声をあげた。

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ザーは会議場にいたブリタニアの重鎮らを見回すと、"これはサー・ジョフリー! そしてサー・デュプレ! シェリー!そちらにいらっしゃる方は王室評議会のアークース殿とお見受けします。初にお目にかかります。テルマーより参りましたザーにございます。"と挨拶した。しかし、女王が突然来訪した理由は彼らに会うためでないことは明らかだった。

応じてブラックソンが腰をあげると、ザーは自らブラックソンの元へと歩み寄って言った。"あいにく今日はあまり時間がないのです。ただ、ただ、一言お礼を申し上げたく、こうして供の者もつけずに馳せ参じました。ロード・ブラックソーン!あなた様こそ真の王にございます。我がテルマーの民の多くがあの疫病のために犠牲になりました。そしてあろうことか我が娘リスタも病を得て、あなた様の開発した治療薬によって一命をとりとめました。これもすべて私の不徳のいたすところでございます……!どうぞ、どうぞ私がここへ来たことはご内密に……!"

女王たる身のザーが感謝を述べるためだけにわざわざ単身で女王が訪れた事実に私は驚いた。だが、ザーが続けて語った内容には戸惑わざるを得なかった。"けれどもし、あなた様が王としてこのブリタニアに君臨される時が参りましたら、その時には、私はふたたびこのブリタニアの地にリスタを伴って来るつもりです。テルマーの民だけでなく、ヴァーローレグの民もムーンゲートの修復に沸いております。あなた様が王としてこのブリタニアに君臨されることは、我が民をもひとつにする可能性すら秘めているのです。そして我がガーゴイル族とブリタニアはその時こそ、真の友情で結ばれるでしょう!"

それは非公式の来訪であるとの前提を差し引いてさえ、テルマーがロード・ブラックソンの国王就任を支持すると表明したに等しい内容だった。会議場はどよめき、なかにはテルマーの内政干渉と批難する声もあったが、テルマーの動向をブリタニアが無視できぬことも事実として横たわっていた。

ブラックソンは女王に対し多くを語らず、ただ"リスタ殿の一日も早い回復をお祈りしよう。"とだけ伝えた。

"サー・デュプレ、サー・ジョフリー、ロード・アークース、そしてシェリー!しばしのお別れでございます。近い将来、必ずや喜ばしい歴史の1ページが刻まれることを祈っております……!ごきげんよう!"そう女王は語ると、足早に会議場を去っていった。

大勢は決したかにみえた。此度の国民会議は政治的駆け引きが色濃いものであった。王室評議会が先んじて放った一手たるデュプレ国王擁立とブラックソン排斥は、旧王制派が絡め取りブラックソン国王擁立という一手によってまとめて尻すぼみとなったのだ。もはやアークースは"ぐぬぬ……。ばかな!ばかな……。"と呟き頭を振るばかりとなっていた。

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それでも、一部にテルマーの内政干渉を憂う声を聞きつけると"その通りだ!我が王室評議会は引き続きこの男の監視を続ける。我がブリタニアと王室評議会はあくまでも民主的な統治を目指している。独裁者の思うままにさせるわけには行くまい。"と言い、王室評議会の方針は変わらぬことを示していた。

ブラックソンはようやくアークースと対峙し"アークース殿。私たちはポーンだ。私も含めて。ポーンのないチェスがあろうか?"と語りかけた。それは抽象的ではあるが、王位に関係なく難局に挑もうとする彼の決意を物語っていた。

その問いかけにアークースが応じることはなく、代わってデュプレが"君の言う通りだよ。ロード・ブラックソーン。けれどキングのないチェスもまたない。我々一人ひとりが自覚を持って新しいブリタニアを作って行かなくてはならない。クィーンも必要かも知れんがね。"と彼なりの冗談を言い、ウィンクをしてみせたのだった。

ジョフリーはもはや議論することなしと見ると席を立ち辞去を告げた。"王室評議会だけではなく、我々ロイヤル・ガードやすべての民衆が、今後はあなたの一挙手一投足に注目することだろう。あなたが王に値すれば民意があなたを即位させるだろう。しかし統治とは決して王が一人で成すものではない。民意によってキングを動かすのは我々ポーンである。では、私はそろそろ失礼する。"それは武闘派の彼らしくないといっては失礼か、実に文学的な示唆であった。

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続いてデュプレも人々へ別れを告げる。"私も失礼するよ!喉が渇いたんでね。では諸君! 近いうちにまた会おう!"と言い、騎士道の Sacred Journey を用いて去っていった。

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呼び出されたにもかかわらずアークースとともに取り残される格好となったブラックソンだったが、シェリーの邪魔をせぬよう配慮した結果のようだった。シェリーは重苦しかった議論を忘れたかのように"ねえ! ブラックソーン!あなたに見せたいものがあるの……!きっとびっくりするわよ?あなたのお家よ!あなたは家に帰るのよ!"とブラックソンへ語りかけた。"じゃあね、皆さん!わたしたちもこれで失礼するわ!ごきげんよう!"

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シェリーはブラックソンを連れ立ってムーンゲートの奥へと消え去っていった。そして、議長としてこの会議へ臨み、いまや不信の渦中に置かれる結果となった王室評議会のアークースだけが残された。既に列席者は市民のみとなってしまったなか、"民意だと?わしは認めん。認めんぞ!"と叫ぶ。

カスカを思い出せとの市民の声にも"なんだと!そんな者は知らぬ!我が王室評議会をペテンにかけた偽王など!誰が知るか!"と憮然と言い放っていた。

私は去り際のアークースへ言った。"いずれ王室評議会は民意による代表者へと変わることだろうさ。あなたの居場所はなくなるに違いない。"と。アークースは"ぐぬぬぬ!もう良い!私は帰る!さらばだ!失礼する!"と叫び、乱暴に会議場の扉を開け放つと去っていったのだった。

次期国王へブラックソンが就任するにせよ、デュプレが就任するにせよ、もはや王室評議会との確執は避けようもなくなったろう。しかし、彼らが王国の名士であることは間違いない。彼らを新たな国政のなかで活かす道を示せるか、はたまた窮鼠としてしまうかが次期王政に課せられた最初の政局なのかもしれない。

2012年9月18日 ポーンを動かす者の開催について

ポーンを動かす者
Posted on September 18, 2012
by Nekomata

ブリタニア国民へ

現在ブリタニアの街という街には暴徒があふれ、人々の心はすさみ切っている。イルシェナーの地は正体不明の地殻の変動、ヴァーローレグの浸食、エクソダスの復活、名誉のムーンゲートの損壊という幾重もの苦しみに見舞われ、その景観すらまったく違うものに変わってしまった。さらにテルマーの地もガーゴイルの疫病がはびこり、一部情報筋によるとプリンセス・リスタも一時期その命が危ぶまれたということである。

そしてその一連の事態を何者かが収拾したということは既に聞き及んでいると思うが、彼の正体については今日まで確証は得られていない。

我々はこの者の監視と、暴徒の鎮圧を火急の任務と捉え、王室評議会とロイヤルガードを代表して会議を招集し、広く各街の市民の意見を求めるものである。

ついては来る9月22日土曜日20時より(瑞穂回は9月23日日曜日20時より)、ブリタニア城において、サー・デュプレ立会いのもと国民会議を招集する。

王室評議会代表
〜サー・アークース

ロイヤルガード・キャプテン
〜サー・ジョフリー



開始予定日時:
大和シャード/9月20日(木)22時〜

無限シャード/9月21日(金)22時〜

桜シャード/9月22日(土)20時〜
出雲シャード/9月22日(土)21時〜
北斗シャード/9月22日(土)22時〜

瑞穂シャード/9月23日(日)20時〜
倭国シャード/9月23日(日)21時〜
飛鳥シャード/9月23日(日)22時〜

集合場所:
トランメルのブリテイン城1階南西の部屋
(六分儀座標:1o 40′S, 0o 46′E)

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2012年9月19日 覚醒 - 第八章

力は比類なきものだった。その力が全身に流れるのを感じながら、男は神殿の持つエネルギーで呪文を唱えた。その呪文は、自身の研究とギルフォーン(Gilforn)から学んだ知識より男が編み出したものだ。トランメルを創りだした時、ニスタル(Nystul)もこの力を感じたのだろうか? 初めてゲートを創りだした時、ギルフォーンの手をこの力が駆け巡ったのだろうか? それともこれは全く異なるもの……彼の友の徳の原動力……なのだろうか? 頭によぎる様々な思考を捨てて呪文に集中し、一瞬で力を解き放った。神秘的なエネルギーは、名誉の聖杯をかたどって並べられたタイルに沿って滝のように流れ、それを追うように炎が走る。それは見る者の心を刺激する信じがたい光景だった。エネルギーの走った跡を示す残り火のように、紫の光が一筋輝いていた。彼はゆっくりとゲートに近づき、一呼吸し、一度ふり向いて集まった者たちを見てから足を踏み出し……、トランメルのブリテインに到達した。無事正しい目的地に着いたのだ。彼はもう一度ゲートを使ってイルシェナーの名誉の神殿に戻り、まだそこにいた者たちに短く話をした。

短い話を終えた後、彼は再びゲートに入ったが、今度はひび割れ崩れた大地に着いた。一体のハーピー(harpy)が翼をばたつかせながらギャーギャーと喚きたてて飛びかかって来たが、彼は全く動じなかった。さっと手をあげ、呪文を唱えた。「Vas Ort Grav!」稲光が走ったかと思うと、激しい雷に打たれたハーピーは焼け焦げた肉塊となって転がり、天空は轟く雷鳴で震えた。もう一体のハーピーが近寄って来たが、ローブの乱れを直したロード・ブラックソン(Lord Blackthorn)がじろりと睨むと、このハーピーは勇気より慎重を選んで逃げ去っていった。彼はゲート周辺を軽く見渡してから、名誉の神殿の時と同じように、両腕を広げた。この場所でも、同じ力が感じられた。使われることをじっと待っている、ある明確な目的に定められた力……。彼の両腕は下ろされた。ここにどんな力があったにせよ、それは必要とされたものではなかった。再びゲートに足を踏み入れ、テルマーのキャンプに向かった。

キャンプに到着するとすぐに彼は座り、自分の記録を調べた。治療薬は病を寄せ付けず、薬を与えられた者は全員小康状態を保っていた。病が再発したという事例もなく、再流行の兆しもなかった。ガーゴイルの伝染病の克服、名誉のムーンゲートの修復が行われてもなお、数々の問題が残っていたのだ……。彼を最も悩ませるもの。それは、かつてブリタニアという一つの王国にまとまっていた各街で起きている問題だった。いくつかの街は全面戦争の瀬戸際にあり、それを止める手だてはそう簡単には見出せそうになかった……。だが、どんな問題にも必ず解決策はあるはずだ。他の問題のいくつかは、既成の枠組みにとらわれない自由な発想に基づく思考法である水平思考をやや多く重ねれば済んだ。重い足音がある人物の到着を告げ、ブラックソンはその人物に向かって手招きした。

「ロード・デュプレ(Lord Dupre)、また来ていただけるとは。あなたのことだからトゥルー・ブリタニアンズ(True Britannians)のために遠方に向かったのかと思っていたよ」

「できることなら、オレだって冷たいヴァロライトと鉄が全ての問題を解決してくれる場所にいたいさ。貴族たちが言葉と世論の誘導で戦う場所なんてごめんだね」

ブラックソンは両手の指先を合わせて思索にふけり、水平思考で浮かんだ独自の考えに戻ろうとした。「デュプレ、あなたの答えは全くの誤りではないと思う。正しく行うこと、それが必要だ」

The Awakening - Act VIII

Kai Schober
18 Sep 2012 12:32:32 EST

Written by the EM Team

The power was inimitable and without equal or peer; he could feel it flowing through him as he channeled the energies of the shrine itself into the spell that he'd pieced together from his own research and what Gilforn had taught him. Was this how Nystul had felt when he had created Trammel? The rush of power that coursed through Gilforn's hands as he fashioned the gates initially? Or could this perhaps be something else entirely...the power of his friends Virtues at work? He let his wandering thoughts go as he focused on the spell, and felt the power suddenly rush out in an instant. Flames and fury rushed forth along the course of tiles that formed the Honor chalice, as magical energies cascaded along the path before them. It was exhilarating and incredible, and a line of purple flame stood blazing as a testament to the power that was used. He approached the gate slowly and took a breath, looking back at those gathered, and stepped through...and came out the other side into Britain in Trammel. Exactly where he'd wanted to. He stepped back into the gate to speak briefly to those still gathered at Honor, Ilshenar.

After he'd addressed them and spoken briefly, he once again stepped through the gate, but this time arrived in a cracked and broken landscape. A harpy screeched loudly as it's flapping wings led it towards him on a dive, but he was not deterred for an instant. It took only a moment to hurl his hands out and chant the words. “Vas Ort Grav!” The heavens shook with a resounding peal of thunder as a burst of lightning arced out of the sky and took the harpy full force in the chest, blasting it aside into so much cooked flesh. Lord Blackthorn straightened his robe as he eyed another approaching harpy, which chose discretion over valor and fled. He took only a moment to look at the landscape around the gate, and he held his hands out much as he had at the Honor shrine. Here, too, he could feel that same power, just waiting to be used and set to some definite purpose...and he let his hands drop down to his sides. No matter what power there was here, it wasn't what was needed. He stepped back through the gate and headed towards the camp in Ter Mur.

Having reached the camp he sat down and looked over his notes. The cures were keeping the disease at bay and none of those treated were showing anything but signs of remission. There were no recurrent cases and reinfection didn't seem to be occurring either. Even with the gargish plague counteracted and the Honor moongate fixed, there were other problems...though the one that troubled him most was what was occurring in the cities of the once unified realm of Britannia. They were on the verge of outright warfare amongst some of the cities and it was difficult to think of anything that might be able to be done about it...but there was always a solution to any problem. Some of them just took a bit more lateral thinking than others. A heavy step heralded the arrival of another, and Blackthorn waved him over.

“I'm surprised to see you return and come calling once more, Lord Dupre. I had assumed that your own endeavors with the True Britannians had once again drawn you away.”

“I wish that I were in those lands, where cold valorite and iron answered all problems. Not in this one where the nobles duel with words and propaganda.”

Blackthorn steepled his fingers together as he lost himself in thought, finding his way back to his original ideas of lateral thinking. “Dupre, I think perhaps that your answer isn't all wrong. It just needs to be applied correctly.”

投稿者 Siel Dragon : 2012年10月08日 23:29